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文書作成日:2024/02/05
分譲マンションの相続税評価額は高くなったのか?

分譲マンションの相続税評価額が高くなったと聞きました。今後は分譲マンションを購入しない方がよいのでしょうか?

Q
今月のご相談

 現在、戸建てに住んでいますが、高齢になり自宅の維持も難しくなってきました。
 今後のことも考え、住み替えを検討しています。ある程度利便性の良いところと考えると分譲マンションが多いのですが、分譲マンションの相続税評価額が高くなったと聞き、購入を躊躇しています。分譲マンションであれば必ず相続税評価額は高くなってしまうのでしょうか?

A-1
ワンポイントアドバイス

 相続税を計算する際に用いる財産の相続税評価額のうち、居住用の分譲マンション所有に係る相続税評価額の評価方法が改正されました。特に高層階に影響があるといわれる改正ですが、分譲マンションであれば必ず相続税評価額が高くなったとはいい切れません。

A-2
詳細解説
1.従来の居住用の分譲マンションの相続税評価

 相続税法では、相続等により取得した財産の価額(相続税評価額)は、特段に定めるものを除き、「相続開始の時の時価で評価」によるものとされています。この時価による相続税評価額は、通常、財産評価基本通達の定めに従って算定します。

 たとえば、居住用の分譲マンション1室は、従来より以下の算式により相続税評価額を計算します。

居住用の分譲マンション(一室)の相続税評価額(自用の場合)
=区分所有建物の価額(@)+敷地(敷地権)の価額(A)
  1. @区分所有建物の価額
    =建物の固定資産税評価額×1.0
  2. A敷地(敷地権)の価額(※1)
    =敷地全体の価額(※2)×敷地権の割合
  1. ※1 小規模宅地等の特例の適用は未考慮
  2. ※2 路線価方式又は倍率方式により算定した評価額

 上記のとおり土地については、敷地権の割合で按分して算定されるため、敷地面積あたりの戸数が多いマンションは、一戸建て住宅より「相続税評価額」と「時価」との乖離が生じやすいといわれています。

 実際、財産評価基本通達改正のためのパブリック・コメント内で示された「御意見に対する国税庁の考え方」の中で、「相続税評価額と市場価格(売買実例価額)との乖離は、いわゆるタワーマンションに限らず、中低層も含め居住用の区分所有財産(いわゆる分譲マンション)全体について平均して2倍以上の乖離が生じており」と述べていることからも、お分かりいただけるかと思います。

 とりわけ戸数が多く高層階ほど時価が高くなるタワーマンションではその傾向が顕著で、富裕層が相続税対策のために高額なタワーマンションの高層階を購入する、いわゆる“タワマン節税”という言葉も一般的です。

2.財産評価基本通達の改正

 このタワマン節税に関する最高裁判決で国側勝訴が確定となり、これにあわせて、令和5年度税制改正大綱の中で評価の適正化の検討が示されました。その後有識者会議を経て、国税庁はパブリック・コメントを出しました。

 最終的な改正内容としては、上記1.で求めた相続税評価額が市場価格理論値の6割に満たない場合には、6割の水準まで評価額を引き上げるものとなり、2024年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した財産について適用されます。

 つまり、6割に満たない場合に改正前よりも評価額が上がるのであって、必ずしも分譲マンションすべての評価額が上がるとまではいい切れません。

 また、評価額が上がったとしても6割程度まででおさまると考えれば、QOLも考慮に入れつつ、分譲マンションへの住み替えも候補の1つとして、継続してご検討されてはいかがでしょうか。

 なお、国税庁のサイトでは、改正後の評価額(区分所有補正率)が算定できる計算ツールを用意しています。

 評価額を引き上げる具体的な計算は、上記1.の@やAに区分所有補正率を乗じることとなりますので、もしすでに所有されている場合には、上記計算明細書で区分所有補正率を試算し、どのくらい引き上げられるのか又は引き上げられずに済むのかなどを確認されるとよいでしょう。

 相続税に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

<参考>
相法22、e-GOV パブリック・コメント「「居住用の区分所有財産の評価について」の法令解釈通達(案)に対する意見募集の結果について」

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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